プリプレス技術とワークフローの追求/髙瀬勝己

PDFのプロセスカラーを特色に変換
最新版は2025(再配布、改変禁止の違反により、現在一般配布はしていません。)


以前、「プロセスカラーを特色に変換(擬似色定義CMYK、Lab)」のフィックスアッププロファイルが一般向けに配布されていました。しかし、擬似色定義の値を調べて入力しなければならない手間があります。特にLab値については-値を入力するとAcrobatの仕様でUIが崩れ遅延が起こります。

擬似色定義CMYK

擬似色定義Lab

-値を入力するとUIが崩れます。
「プロセスカラーを特色に変換 2022」以降
DIC、PANTONE専用ですが、以前のような代替カラー値を入力する必要はありません。DICは特殊番号、伝統色を含めた2,230色、PANTONEはC:2,131色、U:1,537色の代替カラー値が予め登録されているので変換先の特色番号を入力するだけです。アプリケーションで指定した場合と同じ表示となります(アプリケーションで用意されていないDICの特殊番号、伝統色は除く)。また、2025年版はPDFの最適化によって容量の縮小も行います。
「PANTONE Cool Gray 1 C」のような場合は「Cool Gray 1」、「PANTONE Black C」と「PANTONE Yellow C」の2色のみはプロセスカラー名と重複しないように「PANTONE Black」、「PANTONE Yellow」と入力します。
※Adobeは、2022年8月16日以降の段階的なPANTONE+のカラーブック廃止を告知しています。Photoshop 2022(Ver.23.5)、Illustrator 2022(Ver.26.5)、InDesign 2022(Ver.17.4)より「PANTONE+ Color Bridge Coated」、「PANTONE+ Color Bridge Uncoated」、「PANTONE+ Pastels & Neons Coated」、「PANTONE+ Pastels & Neons Uncoated」、「PANTONE+ Premium Metallics Coated」が削除されました。Photoshop 2024、Illustrator 2024、InDesign 2024では完全に廃止されました。

代替カラー値を予め登録しています。InDesign、Illustrator、Photoshopと共通です。Acrobatの特色ライブラリに含まれるPantoneはPlusではないため色数や代替カラー値も異なるので作り直しています。
特色の擬似色定義はモニタ表示に影響します。DICはIllustrator CS6以降Labとなり特色名にそれを示すsが付きます。Acrobatの特色ライブラリもLabです。しかし、InDesignは特色名にsが付いていますが擬似色定義のデフォルトがCMYKであり、この矛盾が混乱を招きインキ管理で「特色に標準Lab値を使用」をオンにしないと、それ以外のアプリケーションと色が異なる事になります。最初に登録した特色の擬似色定義が優先されるので予め統一しておくべきです。また、Labからの疑似色化(強制CMYK)の数値は作業用CMYKにより変化します。

DIC 584B
擬似色定義Lab

DIC 584B
擬似色定義CMYK
変換手順
変換後もオーバープリントが反映する記述をさせるためにDistillerでPDF/X-1aを用意するのはこれまでと同じです。なぜX-1aかという点についてですが、Acrobatのデフォルトではオーバープリントを反映させる対象が「PDF/Xファイルに対してのみ」となっているためです。PDFを送る相手がそれ以外のオーバープリントも反映されるようにカスタマイズをしているとは限りません。むしろ、その可能性は低いと考えるべきです。デフォルトの環境を想定する事は無用なトラブルを避けるためにも必要です。
AcrobatからPostScriptを書き出します。デフォルト(デバイスに依存しない)のままで問題ありません。EPS(Encapsulated PostScript)でも構いませんがページ物は分割されます。

Distillerを起動して書き出したPostScriptファイルをウィンドウにドラッグ& ドロップしてPDFに変換します。デフォルト設定が済んでいれば、ファイル→このアプリケーションで開くでDistillerを選べば変換まで完了します。

添付画像は、品質を維持するため変換設定にSCREENの「EQUIOS X1a 2001_1_J」を使用していますが、あくまでも確認用として容量の軽いPDFを求めるのであれば、圧縮による劣化はありますがAdobeが用意している「PDF/X-1a:2001 (日本)」を利用しても良いでしょう。
変換するプロセスカラーに対して変換先の特色番号を入力
※「OK」をクリックすると保存のダイアログが表示されます。

書式を間違えると代替カラー値を適用できません。
例:DIC XXX→XXX
PANTONE XXX C→XXX
入力した特色番号の書き出しと取り込みが可能です。
再度、「プロセスカラーを特色に変換 」をダブルクリックして目的の代替カラー値にチェック
※「OK」をクリックすると保存のダイアログが表示されます。

空欄のままにします。
いずれかにチェックを入れます。
特色を別の特色に変更するには、変換対象の特色名と変換先の特色番号を入力
※「OK」をクリックすると保存のダイアログが表示されます。

変換した特色に対して再度変換するには、変換先の特色番号を入力してください。正規表現の利用も可能です。
擬似色定義がCMYK、あるいは混在、またはOutlinePDF Advanceへの変換によって擬似色定義がCMYKとなり変換前から外観の色が大きくかけ離れてしまったPDFに対してもLabで再定義します。
特色名の表記は、DIC X、DIC Xs、DIC Xs*、DIC Xs#等にも対応しています。

OutlinePDF Advanceによる擬似色定義の変化

擬似色の再定義を行った結果
変換する前のPDF


変換した後のPDF


DIC伝統色
これまでDTPアプリケーシ ョンに用意されていなかったDIC伝統色(日本、フランス、中国)941色を追加登録しています。また、その過程においてInDesign、Illustratorで利用できるスウォッチライブラリも開発しました。

特色の印刷物は、プロセスカラーで代用して制作し印刷時に特色で刷るというのが一般的でした。制作段階において特色で指定すると、掛け合わせをオーバープリントで表現し(InDesignは混合インキが使用可能)、画像に対しては調整レイヤーで扱えず色調修正が難しくなります。製版でもプロセスカラーであればスクリーン角度を指定する必要はありませんが、特色で作られた場合は指定しなければなりません。刷り順の指示も必要です。
しかし、Illustratorは透明を含むグレースケールへの着色は特色のみで可能であり、ドロップシャドウのボケ足などは互換性がないため、すでに作成されたドキュメントをプロセスカラーにあるいはその逆で特色へ置き換えて作り直すのは推奨できません。
確認用PDF
PDFによるオンライン校正が普及し、製版処理済みのOutlinePDF Advanceをメールに添付できる容量に縮小した確認用PDFが必要になる機会も多いです。しかし、Acrobatに用意されている「サイズが縮小されたPDF」、「最適化されたPDF」ではデフォルトの設定も使い勝手も悪く、カスタマイズした設定をグループワークで使用する事も容易ではありません。そのため、確認用PDFを書き出すための最適化を行うフィックスアッププロファイル「PDFの最適化」を用意しています。デフォルト設定のまま汎用的な確認用PDFを書き出せますがプルダウンメニューによる選択で仕事に応じたカスタマイズが可能であり、その設定ファイルを保存する事でグループワークも容易です。誤って実際の印刷に使用してしまうトラブルを防ぐため、サブタイトルに「確認用PDF」の記述が追加されます。バッチモードまたはドロップレットを使用した場合、ファイル名末尾に「_確認用」の文字が追加されます。
また、出力インテントを埋め込む事でそのICCプロファイルがない環境でも Acrobat ProはもちろんReaderであっても自動的に適用されるので、 オーバープリントを反映させる設定にさえしておけば同じ色を見せる事が可能です。
※PDFの最適化は、画像のダウンサンプル以外に以下の処理を行います。
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PDF/Xエントリを削除
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すべての代替画像を破棄
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オブジェクト圧縮の削除、適用または調整
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クリッピング領域の外側にあるオブジェクトを削除
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トンボ類からページジオメトリボックスを派生
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他のアプリケーションからのプライベートデータを破棄
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圧縮されていないストリームオブジェクトにZIP圧縮を適用
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無効なしおりを破棄
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無効なリンクを破棄
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非表示レイヤーを破棄し、表示レイヤーを結合
PDFの最適化 2024

免責
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Acrobatに用意されている機能を利用したフィックスアップであり、その機能に何らかの不具合(例:Distillerを介さずに直接変換するとオーバープリントは保持されますが反映しません)が存在するような場合、正常な処理ができない可能性もあります。
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PDFに対するフィックスアップは、構造的に矛盾が含まれる事は珍しくありません。「プロセスカラーを特色に変換」では、PDF/X-1aでありながら特色の擬似色定義がLab、版数と実際に空でない版数が異なる状態となります。このようなPDFを印刷用として入稿した場合、何が起きるか予測できません。あくまでも確認用PDFである事を理解した上、自己責任で使用してください。
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無料で配布するにあたって、すべての権利を放棄したわけではありません。再配布、改変を禁じます。プロファイルは内部の組み合わせや順番によって破損してすべてのプロファイルが読み込めなくなるといった事が起きます。再インストールによっても書き換えされないので、該当するフォルダを手動で削除しなければ復旧できないケースもあります。これについてはAdobeのフォーラムでも私が回答しています。改変によるトラブルに対して一切の責任を負いません。