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モノクロ4Cとスミ基調、そして部分GCR

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音楽関連の作品では4Cの仕事においてモノクロ調の画像をグレースケールで使うという事はまずありません。4Cを使ってK1Cでは表現できない濃度感を再現します。しかし、一般的なオフセット印刷向けのCMYKプロファイル(例:Japan Color 2011 Coated)を使ってモノクロ調の画像を変換すると、Kは中間から徐々に入ってくる補助的な役割を担い、このようなCMYの3Cでグレーを再現するUCR(Under Color Removal)では印刷時にグレーバランスを崩さず保ち続ける事は非常に難しく、ブレは色被りとなって再現性にバラツキが生じてしまいます。グレーの背景が多く使われる音楽関連の作品では、まず間違いなく印刷機が止まる事態となります。

UCRのCMYK分解カーブ(Japan Color 2011 Coated)
Japan-Color-2011-Coaeted_分解カーブ.jpg
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モノクロ4C_UCR_C.jpg
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モノクロ4Cカーブによる変換

グレーを安定して刷れるようにKで全体をコントロールした画像に変換します。モノクロ調のの再現においてKが主体であればあるほどブレても色相は変化しません。一連の処理をアクションに登録してモノクロ4C変換を行ってきました。流れとしては、一度グレースケールにしたものをCMYKそれぞれに複製し、グレーバランスを調整します。微妙な濃度調整については、バランスを崩さないようにモノクロ4Cのカーブレイヤー下の階層で行います。

モノクロ4Cカーブとレイヤー構造
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モノクロ4Cカーブ_レイヤー.jpg
プロファイルによるスミ基調変換

モノクロ4Cカーブは色のブレがほとんど起きません。これはDocuColorのようなカラープリンタで出力してもその違いがはっきりわかります。しかし、このモノクロ4Cカーブは設定したカーブ通りにグレーのバランスが常に統一された状態となります。そのため、色を感じる画像(例:セピア調)に対しては都度手動により元画像の色に合わせる調整が必要になり、部分的に異なる色がある画像に対しては使えません。
そこでプロファイルを使ったスミ基調の変換を行います。プロファイル変換は数値は変化しても色をキープする事ができ、全体的、あるいは部分的に色を感じる場合でも対応できる柔軟性があります。従って、元画像を見ながら濃度や色を合わせる工程が不要になります。安定したグレーの印刷を可能にする事が目的なので、私が開発したスミ基調専用プロファイル「GCR For Monochrome 2025は、一般的なGCR(Gray Component Replacement)よりもハイライトからスミが積極的に入ります。GCRというとロゼッタモアレの問題を考慮しなければいけませんが、CMYK分解カーブの形状からその心配はない事がわかります。モノクロ4Cカーブによる変換結果を目標に調整しているので、カーブとプロファイルどちらを使うかという判断は不要になります。CMYK to CMYKの変換前後で外観の変化を防ぐには、CMYK→RGB(相対的)→CMYK(知覚的)というフローが必要です。また、RGBから直接変換を行った場合はJapan Color 2011 Coatedよりも​さらにシャドーの濃度と階調を正確に再現できます。

GCRのCMYK分解カーブ(GCR For Monochrome 2025)
GCR-For-Monochrome-2025.jpg
モノクロ4C_GCR.jpg
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モノクロ4C_GCR_M.jpg
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プロファイルによるモノクロ4C変換の比較
中間をC−3%、M+3%、Y−3%動かしたJapan Color 2011 Coatedのモノクロ4C
モノクロ4C_UCR_変動.jpg
中間をC−3%、M+3%、Y−3%動かしたGCR For Monochrome 2025のモノクロ4C
モノクロ4C_GCR_変動.jpg
部分GCRという技術

GCR変換はCMYをKに置き換えるため、必要な色成分がKに吸収されてしまい色調修正がしにくくなります。また、肌にもKが入るため文字通りスミっぽくなる恐れがあり肌ものには致命的です。KからCMY成分を分離するのは難しく、グレーの再現性を重視したスミ基調専用プロファイルであれば尚更です。豊かな色再現はCMYをハイライトからシャドウまでKの影響を受けずに使えるUCRの方が上です。特にGCRのブラックは色が飽和しやすくなります。
そこで、グレーの部分だけに対してスミ基調専用プロファイル「GCR For Monochrome 2025
で変換を行い印刷への最適化を行う技術を開発しています。私はこれを「部分GCR」と呼んでいます。髪の毛の1本1本まで正確に切り抜くレタッチ技術と複数のプロファイルを共存させるカラーマネジメントに対する理解があって完成した、UCRとGCR両方の利点を生かしたハイブリッド構造となっています。印刷への最適化であり、適用範囲の変更が可能な非破壊編集となっています。また、仕事で使うには数十点に対応できるだけの速さと正確さが求められるので効率化の追求もしています。私が担当していたミリオンセラーの連続記録を更新しているアイドルグループの作品にグレー成分がある場合はこの技術を使っています。

PP加工に対してPPカーブを適用する際には注意が必要です。UCRとGCRでは掛け合わせの数値が極端に異なるので同じ色に見えていたグレーに対して明確な違いが生じます。そのため、境界が曖昧で繊細なマスク処理が難しい部分には変換結果をグレー以外にも反映させる必要性が生じます。この技術はプロファイルの精度があってこそ成立するものです。

Japan Color 2011 Coatedによる変換
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背景のグレーに対して部分GCR処理
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中間をC−3%、M+3%、Y−3%動かしたJapan Color 2011 Coatedによる変換
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中間をC−3%、M+3%、Y−3%動かした部分GCR処理された画像
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スミ基調にする事で得られるメリットは、印刷時の安定性だけではありません。度々問題となる環境光の影響も受けにくくなります。これは製版、印刷会社の環境光である色評価の標準光源(5000K)ではない店舗や自宅でも作品本来の色を再現して伝えられる事を意味します。印刷する側の都合だけでなく、印刷物を手にする側の立場も考えるのが印刷への最適化です。

どんな技術を使っているかは使った本人にしかわかりません。それが使われなくなって今までできていた事ができなくなってから他人は気がつくものです。技術は言葉で語るものではなく結果で示すものです。製版は印刷を考慮した版を作る技術であり、印刷の色を制御するのはCMYKをコントロールする事です。それをできない人間が印刷の色を語る事に違和感を感じざるを得ません。

© 2021 Katsumi Takase
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