プリプレス技術とワークフローの追求/髙瀬勝己

製版工程とJavaScript



JavaScriptというと、主に組版する上で自動化を目的としたツールが多く公開されています。製版用途向けというのは見つからず情報もないのですが、自動化できれば便利という処理は多くありますのでこれまでに開発してきたツールを紹介する事で、製版工程で利用できるJavaScriptの開発にもっと目が向けられればと思います。
■Illustrator
リンクを再設定(Illustrator).jsx
InDesignにあるリンクを再設定する機能をIllustratorで行うスクリプトです。ドキュメントに配置されている画像のファイル形式が異なる場合(ファイル名が同一で拡張子が異なる)、自動でリンクを再設定します。音楽、アニメ関連の仕事では数十、数百点の画像処理は珍しくないため、手動によるリンクの再設定は時間の無駄だけでなく差し替え間違いの危険性もあるのでスクリプトによる自動処理は必要不可欠です。
検索と置換は検索文字列を条件として置換文字列のファイルで再設定を行います。追加は_PPや_Aなどの文字列を追加したファイル名で再設定します。どちらも未入力の場合は指定された拡張子のみでリンクを再設定します。処理の対象は何も選択していない場合はすべてのリンク、選択している場合は選択されているリンクとなります。
すでに再設定がされた状態のファイルが存在する場合、それらを除外して処理するので処理結果に表示される点数は実際に再設定をした点数です。ダイアログを閉じると再設定したリンクが選択されるのでリンクパネルから処理したファイルの確認が可能です。また、画像に限らずaiからPDFに再設定するような使い方も可能です。

処理が完了するとダイアログが表示されます。

スクリプト実行前のリンクパネル

スクリプト実行後のリンクパネル(左:拡張子のみ、右:検索と置換+拡張子)


Font Information from XMP.jsx
Illustratorのフォントの検索と置換は、InDesignと比べると非常に簡素で得たい情報が表示されません。Type 1フォントが使用できなくなったバージョンでは単に不明フォントの扱いとなるだけです。確実な情報がないと不明フォントの対応が遅れるばかりで仕事に影響します。編集をする際のトラブルはフォントを認識しない事によるものが多く、その対策としてドキュメントのXMPメタデータからフォント情報を参照するスクリプトです。
使用されているフォントの数、フォーマット別の数、注意が必要なフォーマットについては説明も表示します。また、合成フォントにも対応しています。
XMPメタデータは誤った情報で更新される場合もあるため、それを判断できるフォントに対する知識は必要です。
Illustratorのフォントの検索と置換

Font Information from XMP

プロファイルの不一致を非表示.jsx
Illustratorはカラー設定でプロファイルの不一致に対して警告を表示する設定にしていると、確認のダイアログを表示してOKボタンを押すように促します。リンクファイルが数十点あるような場合、一点一点繰り返さなければならず鬱陶しい作業となり時間を無駄にします。
このスクリプトは、カラー設定のカラーマネジメントポリシーに従って確認のダイアログを表示せずに処理を行うものです。
以下のダイアログを非表示にしてカラーマネジメントポリシーに従って処理
